この記事は状況が変わる話です。 書いているのは2026年9月7日で、そのとき公開情報で確認できたことだけを日付つきで書いています。読んでいる時点では状況が変わっている可能性があります。最終的な判断は必ず処方元でしてください。
そのうえで——プロ・バンサイン錠15mgは、2026年9月時点で出荷停止になっています。
1. 公表されている文書に何が書いてあるか
製造販売元のファイザー株式会社が、2026年9月付で「プロ・バンサイン錠15mgの出荷停止に関するお詫び」(文書番号PRB27Q002A)を医療関係者向けに公表しています。内容を整理します。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 対象製品 | プロ・バンサイン錠15mg 100錠【10錠(SP)×10】(統一商品コード 114-97900-1) |
| 状況 | C:出荷停止/⑤:供給停止 |
| 出荷再開時期 | 未定(※判明次第ご案内いたします) |
| 発出時期 | 2026年9月 |
出荷停止に至った経緯は、文書に2段階で書かれています。
本製品は大幅な需要増加に対応するため増産を継続してまいりましたが、更なる需要増に伴い、2025年6月より出荷量通常による限定出荷(A-②)を開始しております。加えて、今般、海外の委託製造所において製造された原薬(プロパンテリン臭化物)に異物混入が確認されたため、本製品の製造を保留し、調査および再発防止策を行うこととしました。これに伴い、誠に勝手ではございますが、当該調査が完了するまでの間、本製品を出荷停止(C-⑤)とさせていただきます。
つまり、
- もともと需要増で2025年6月から限定出荷になっていた
- そこに原薬の異物混入が重なり、製造を保留して調査中
- 調査が終わるまで出荷停止
という順番です。再開時期については、
また、調査および再発防止策の対応には時間を要するため、出荷再開時期は現時点で未定です。再開時期が判明次第、速やかにご案内申し上げます。
と記載されています。「もうすぐ戻る」とは書かれていません。
2. 今持っている分について
すでに手元にある薬について、文書に明記されている一文があります。
なお、現在流通しております本製品につきましては、今回異物混入が確認された原薬とは異なる原薬を使用しております。
流通している製品は、今回問題になった原薬とは別の原薬で作られている、という記載です。この一文は、手元にある薬をどう扱うかを考えるうえで重要なので、正確に読んでおいてください。
そのうえで、服用の可否・継続については処方元の判断です。自己判断で急に中止したり、量を変えたりしないでください。
3. 処方元にどう相談するか
ファイザーの文書は、医療関係者に向けてこう依頼しています。
甚だ勝手ではございますが、本製品の納入が困難な場合、また在庫消尽後におきましては、関係卸様とご相談の上、代替品でのご処方または代替治療をご検討いただきますよう、ご理解とご協力をお願い申し上げます。
判断するのは処方医と薬剤師です。 患者側にできるのは、相談を早く始めることと、材料を揃えて持っていくことだけです。
タイミングについてもひとこと。「無くなってから」では遅いというのが今回の性質です。今回は限定出荷が1年以上続いたうえでの出荷停止なので、卸や薬局の在庫の残り方には地域差・店舗差があります。手元の残数が2週間分を切ったら動く、くらいの前倒しで考えておくほうが安全です。
相談を持ちかけるときに、手元で整理しておくと話が速い項目を並べます。
- 残りの量と、いつ切れそうか。 「あと何錠」「このペースだと◯月◯日ごろ」まで出しておく
- 今の使い方。 毎日なのか、予定のある日だけなのか。1回あたり何錠か
- 困っている場面。 仕事のどの場面か、生活のどこに支障が出ているか。これは代替を考えるときの材料になります
- 今飲んでいる他の薬。 お薬手帳を持っていく
薬が完全になくなってから受診すると、次を受け取るまでの空白期間が生まれます。残りが少なくなった時点で相談するという運用は、供給が不安定なときほど差が出ます(プロバンサインの服用タイミング)。
4. 代替の話は、医師とする
ここははっきり書いておきます。当サイトは代替薬をすすめません。
日本皮膚科学会の原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版には、内服療法の項でこう書かれています。
本邦で唯一,多汗症に対する保険適用を有する抗コリン薬であるpropantheline bromide(商品名 プロ・バンサイン,45〜60mg,分3〜4)は,1950年代に掌蹠多汗症を対象としたエビデンスレベルIVの研究がある(推奨度C1)
**「本邦で唯一、多汗症に対する保険適用を有する抗コリン薬」**という位置づけです。同じ項では、海外で使われているグリコピロニウム臭化物の内服が本邦では発売中止のままであること、オキシブチニン(内服)には多汗症の保険適用がないこと、高齢の過活動膀胱患者に対して使用したオキシブチニンについては認知症を誘発する可能性が指摘されていることも記載されています。
つまり、「同じ役割の飲み薬が国内にたくさんある」という状況ではありません。 だからこそ、何を代わりに使うか(あるいは内服以外の方法に切り替えるか)は、症状と体質を見ている医師の判断でしかありません。
内服以外の選択肢の全体像は内服薬の基礎知識、塩化アルミニウム外用薬の基礎知識、顔・頭のボトックス、保険適用の現在地にまとめています。抗コリン薬という区分そのものについては抗コリン薬は市販で買えるのかに書きました。
個人輸入という「近道」について
供給が途絶えると、必ず出てくるのが個人輸入です。当サイトはすすめませんし、リンクも張りません。
理由はプロバンサインは市販で買える?に詳しく書いていますが、今回の件に限って言えば、もうひとつ理由が加わります。今回の出荷停止は、海外の委託製造所で製造された原薬の異物混入が発端です。 品質管理の話が起点になっている状況で、国内の確認を経ていないルートに切り替えるのは、方向として合っていません。
5. 供給状況を自分で確認する方法
「いつ戻るのか」を知りたいときに見る場所を書いておきます。
- 製造販売元の製品情報サイト。 ファイザーの供給関連のお知らせはPDFで公開されています。今回の文書もそこにあります
- 厚生労働省「医療用医薬品供給状況報告」。 製造販売業者から報告された限定出荷・供給停止の情報が公表されています
- 日本製薬団体連合会「医薬品供給状況にかかる調査結果」。 厚生労働省医政局と連携して行われている調査の結果が公開されています
- かかりつけの薬局。 実際の流通の肌感を持っているのは、最終的にここです
用語には定義があります。ファイザーの文書にも「日本製薬団体連合会より2023年3月1日付で発出された日薬連発第137号『「医療用医薬品の供給状況に関する用語の定義」の見直しについて』に基づき出荷量の状況・弊社の対応状況を表記しております」と注記があり、「限定出荷」と「出荷停止」は別の状態を指します。ニュースやSNSで「出荷調整」とひとまとめに言われているものが、実際にはどの段階なのかは、一次情報で確認する価値があります。
6. まとめ
- 2026年9月付で、ファイザーがプロ・バンサイン錠15mgの出荷停止を公表している
- 経緯は「2025年6月からの限定出荷」+「原薬の異物混入による製造保留」
- 出荷再開時期は未定
- 現在流通している製品は、今回異物混入が確認された原薬とは異なる原薬を使用している、と明記されている
- 代替の判断は処方元。 早めに相談する。個人輸入はすすめない
汗の悩みで飲み薬までたどり着いた人は、それだけ困っている人です。手が1つ止まったからといって、選択肢が全部消えたわけではありません。 まずは処方元に、状況を持って相談してください。
この記事は診断・治療を提供するものではなく、特定の医薬品の使用や中止をすすめるものでもありません。 服用の可否・量・代替については、必ず処方時の医師・薬剤師の指示に従ってください。記載内容は2026年9月7日時点で確認できた公開情報に基づきます。


