先にお断りしておきます。 このサイトの運営者は顔汗・頭汗の当事者ですが、更年期については当事者ではありません。 体験として書けることがないので、この記事は公開されている資料に何が書いてあるかを整理したものです。

そのうえでこの記事を書くのは、「汗が止まらない」で検索してこのサイトにたどり着く人のなかに、多汗症ではなく更年期の話をしている人がいるはずだからです。相談先が違うのに、汗対策の記事を読み続けてしまうのはもったいない。切り分けを置いておきます。

1. 更年期とは、いつのことか

日本産科婦人科学会の解説では、更年期は**「閉経前の5年間と閉経後の5年間をあわせた10年間」**とされています。

この時期に現れる多様な症状のうち、特に症状が重く日常生活に支障をきたす状態が更年期障害です。症状は3つに分類されています。

分類内容
血管運動神経症状ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、発汗
身体症状めまい、動悸、胸が締め付けられる、頭痛、肩こり、腰や背中の痛み など
精神症状気分低下、意欲低下、イライラ、不眠 など

汗は、いちばん最初の分類に入っています。 「更年期の症状として汗がある」のではなく、汗は代表的な症状のひとつという位置づけです。

2. ホットフラッシュという出方

厚生労働省研究班監修の「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」は、ホットフラッシュをこう説明しています。

上半身ののぼせ、ほてり、発汗などが起こる、更年期障害の代表的な症状

出方についても記載があります。急に顔が熱くなったり、汗が止まらなくなったりする症状が一日に何回も出ては消える、という形です。更年期女性の約半数以上が経験するとされています。

仕組みについては、

加齢に伴うエストロゲン(女性ホルモン)の低下によって、脳の視床下部にある体温調節機能が不安定になることで起こる

とされ、顔や上半身の血管が急に拡張し、ほてりや発汗が生じると説明されています。

**「体温調節機能が不安定になる」**という表現がポイントです。暑いから汗が出ているのでも、緊張しているから出ているのでもなく、体温を調節する仕組みそのものが揺れているという説明になっています。

3. 原発性多汗症との切り分け

では、このサイトが主に扱っている原発性局所多汗症とは、どこが違うのか。

日本皮膚科学会の原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版が引く診断基準は、次の6項目のうち2項目以上を満たすこと(かつ、明らかな原因のない局所的な過剰発汗が6カ月以上続くこと)です。

  1. 最初に症状がでるのが25歳以下であること
  2. 対称性に発汗がみられること
  3. 睡眠中は発汗が止まっていること
  4. 1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
  5. 家族歴がみられること
  6. それらによって日常生活に支障をきたすこと

並べて比べると、こうなります。

原発性局所多汗症更年期のホットフラッシュ
始まる年齢診断基準の1項目が「25歳以下の発症」閉経前後の10年間
のぼせ・ほてり特徴に含まれない中心的な症状
出る場所手のひら・足の裏・ワキ・頭部顔面など、部位が偏る顔・上半身
出方緊張・暑さ・食事などの刺激に対応して出る急に出ては消えるのを一日に何回も
相談先皮膚科婦人科(男性は泌尿器科など)

**いちばん分かりやすい違いは「のぼせを伴うかどうか」**です。カッと熱くなる感覚が先に来て、そのあと汗が出る——という順番なら、汗対策より先に確かめることがあります。

もうひとつの手がかりが**「いつから」**です。原発性局所多汗症は診断基準に「25歳以下の発症」が入っているとおり、多くは若い頃から続いています。40代・50代になって初めて汗が増えたのであれば、それは原発性の典型からは外れます。「昔から汗っかきで、最近さらに増えた」という場合は両方が重なっている可能性もあるので、そのまま伝えてください。

もうひとつ、同ガイドラインは多汗症を原発性と続発性に分け、続発性全身性多汗症の原因として薬剤性、循環器疾患、感染症、悪性腫瘍、内分泌・代謝疾患(甲状腺機能亢進症、低血糖、褐色細胞腫、末端肥大症、カルチノイド腫瘍)、神経学的疾患などを挙げています。ホルモンや内分泌が関わる汗は、皮膚科の「原発性」の枠の外側にある、という整理です。

何科に相談するか

  • 更年期の症状として心当たりがある場合 → 婦人科。ヘルスケアラボの解説も「辛い症状を我慢せず、婦人科を受診してみることもおすすめします」としています
  • 部位が偏っていて、若い頃から続いている場合 → 皮膚科(顔汗・頭汗は何科?)
  • 急に始まった、体重減少や動悸など汗以外の変化を伴う場合 → まず内科(「全身の汗がひどい」は病気のサイン?)

迷ったときは「いつから」「どこに」「何と一緒に」の3つをメモして行くと、どの科でも話が早くなります。汗の記録の取り方は寝汗がひどい原因を切り分けるにも書きました。

4. 治療の選択肢があること(推奨はしません)

当サイトは特定の治療をすすめる立場を取りません。 ここでは「選択肢が存在する」という事実だけを書きます。

日本産科婦人科学会の解説では、更年期障害の治療は**ホルモン補充療法(HRT)・漢方薬・向精神薬(抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬)**の3つの薬物療法を軸としているとされています。

ヘルスケアラボの解説では、

中等度から重度のホットフラッシュに対しては、禁忌がなければ「ホルモン補充療法(HRT)」が最も有効な治療法とされています

とされ、漢方薬などの非ホルモン療法が選択されることもある、と記載されています。

「禁忌がなければ」という条件つきであることに注意してください。何が使えるかは診察を受けたうえでの判断です。汗の文脈で漢方の名前を見かけたときの読み方は汗の漢方に、承認された効能・効果の確認のしかたも含めて書きました。

5. 男性にも起こる

「更年期は女性の話」で終わらせないために、こちらも書いておきます。

日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会による「LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き」には、こう記載されています。

加齢男性性腺機能低下(late-onset hypogonadism:LOH)症候群の身体症状は、血中テストステロン低下に伴う変化として、発汗、ほてり、睡眠障害、記憶・集中力低下、肉体的消耗感、筋肉量と筋力低下による除脂肪体重の減少、骨塩量の低下などが認められる。

「発汗、ほてり」が先頭に並んでいます。 同手引きが紹介するAMS(Aging Males' Symptoms)スコアの質問項目にも「ひどい発汗」が含まれ、別の質問紙には「ほてり、のぼせ、多汗がある」という項目があります。

同手引きは、男性更年期障害の症状として「ほてり、異常発汗、動悸などの自律神経失調症状」を挙げつつ、LOH症候群と男性更年期障害を概念的に区別する記述も置いています。診断基準としては、2022年の改訂で血清(総)テストステロン値が250ng/dL以下または血清フリーテストステロン値7.5pg/mLとされたことが記載されています。

中高年男性の「急な汗とほてり」も、汗っかきで片づける前に確認する価値があるということです。相談先は泌尿器科などになります。

6. まとめ

  • 更年期は閉経前後の10年間ほてり・のぼせ・発汗は血管運動神経症状として代表的な症状
  • ホットフラッシュは体温調節機能が不安定になるもので、一日に何回も出ては消える
  • 原発性局所多汗症の診断基準は25歳以下の発症・対称性・睡眠中は発汗が止まっているなど。のぼせは特徴に含まれない
  • のぼせを伴う汗なら、まず婦人科(男性は泌尿器科など)
  • 治療の選択肢は存在するが、何が使えるかは診察のうえでの判断

汗の対策そのものは、原因が何であれ役に立つ部分があります。服の色は汗染みが目立たない服の色図鑑、拭くものは汗拭きシートの選び方、冷やす道具は冷却グッズの選び方にまとめています。ただし、それは相談を先送りする理由にはなりません。


この記事は診断・治療を提供するものではなく、特定の治療をすすめるものでもありません。 症状が気になる場合は医療機関にご相談ください。