12月の満員電車を降りて、会社に着いてコートを脱いだら、背中と首まわりがチクチクする。夜、服を脱いだら胸元に小さな赤いブツブツ。「あせもは夏のもの」と思っていると、冬のこのかゆみは乾燥のせいだと片づけてしまいがちです。

でも汗っかきにとって、冬は暖房の効いた場所で、厚着のまま汗をかく季節です。あせもができる条件は、冬にもそろいます。この記事では、冬のあせもがなぜできるのか、乾燥のかゆみとどう見分けるか、そしてどう防ぐかを、医学的な資料に沿って整理します。冬の汗全般は冬でも汗っかきはつらいにまとめています。

なお、赤ちゃん・子どものあせもは、この記事では扱いません。小児科か皮膚科で相談してください。

あせもは「汗の出口が詰まる」ことで起きる

MSDマニュアル家庭版は、あせもを「汗が皮膚に閉じ込められることで起こる、かゆみを伴う発疹」と説明しています。汗を皮膚の表面まで運ぶ細い管が詰まり、外に出られなかった汗が皮膚の中で炎症を起こす、という仕組みです。

詰まる深さによって見た目が変わります。よく見かけるのは次の2つです。

  • 透明な小さな水ぶくれ: 皮膚のごく浅いところで詰まったもの。軽く押すと破れるくらいの、水滴のような粒です
  • 赤いブツブツ: もう少し深いところで詰まったもの。チクチクする刺激とかゆみを伴います。一般に「あせも」と呼ばれるのは、たいていこちらです

どちらも出発点は同じで、汗が出たのに、外へ逃げられなかったことです。

冬にあせもができる条件

MSDマニュアル家庭版は、あせもが最もよくみられるのは高温多湿の地域の人と汗を多くかく人だとしたうえで、**「涼しい気候で過度の厚着をしている人」**にも発生する可能性があると書いています。できやすい場所としては、ワキの下のように皮膚同士が触れ合う部分、衣服で覆われている部分、長い時間ほかの面に触れている部分(寝たきりの人の背中など)を挙げています。

これを冬の生活に当てはめると、次のようになります。

条件冬の場面出やすい場所
厚着で覆われるコート・ニット・インナーを重ねたまま、暖房の電車や店内に入る背中・胸・首まわり・ワキ
長い時間、面に触れている電気毛布やこたつで寝る、暖房の部屋で長く座る背中・お尻・太もも
汗の出口をふさぐ汗の多い場所に、ベタつく軟膏を厚く塗る首・胸・背中
皮膚同士が触れ合う着込んで腕を体につけたまま過ごすワキ・乳房の下・太ももの内側

汗っかきには、ここにもうひとつ条件が乗ります。冬でも汗をかき始めるのが早いことです。日本皮膚科学会の原発性局所多汗症診療ガイドライン(2023年改訂版)は、ワキについて「全身が発汗しない低体温でも発汗が生じる」と書き、汗で長い時間湿った皮膚について「汗疹を生じやすく」とも書いています。暖房の室内で汗が出て、それが服の中で乾かないまま過ごす——冬のあせもは、この流れでできます。

冬の電車や室内で汗をかく仕組みは冬の満員電車で自分だけ汗だくになるとこたつ・電気毛布で汗をかくに、冬のワキの汗は冬なのに脇汗が出るのはなぜ?に詳しく書きました。

冬のかゆみは「汗」か「乾燥」か — 見分けの目安

冬のかゆみで多いのは、あせもより乾燥のほうです。日本皮膚科学会の皮脂欠乏症診療の手引き 2021は、皮膚が乾燥する要因のひとつとして冬の外気や暖房による低湿度の環境を挙げ、「冬期の暖房により室内の相対湿度が低下する」ことから加湿器などの対策も必要としています。

手当ての向きが逆になるので、どちら寄りかの目安を知っておくと迷いません。

手がかりあせも寄り乾燥(皮脂欠乏症)寄り
出る場所背中・胸・首・ワキなど、服に覆われて汗がこもる所すねなど脚の伸ばす側に多く、背中や腕にも。汗や皮脂の多い所には少ない
見た目小さな赤いブツブツ、透明な小さな水ぶくれ粉をふく、カサカサする、細かくひび割れる
出るタイミング暖房の室内や厚着で汗をかいたあと暖房で空気が乾いた日、入浴後。ウールの服のチクチクでもかゆくなる
手当ての向き涼しくして乾かす。ベタつく軟膏を厚く塗らない入浴後に保湿する。部屋を加湿する

乾燥肌の好発部位について、手引きは「両下肢伸側」(脚の伸ばす側の面)を挙げ、皮脂や汗の多い顔面や皮膚がこすれ合う部位では発症頻度が低いとしています。汗がこもる場所か、乾く場所かが、最初の手がかりになります。

ただし、これはあくまで目安です。同じ冬に両方が起きることもありますし、湿疹やほかの皮膚の病気が同じように見えることもあります。見た目だけで決めつけず、広がる・長引くときは皮膚科で診てもらってください。

冬のあせもの防ぎ方 — 「涼しく、乾いた状態」を作り直す

MSDマニュアル家庭版は、あせもの手当てとして皮膚を涼しく乾燥した状態に保つことを挙げ、汗を多くかく状況を避けること、過度な厚着や粘度の高い軟膏の使用を避けることを書いています。冬に置き換えると、やることは次の5つです。

1. 暖かい場所に入ったら、1枚減らす

外の寒さに合わせた服のまま暖房の中にいるのが、いちばんの原因です。電車や店に入る前にコートの前を開ける、オフィスに着いたら1枚脱ぐ。 脱いで調整できるのは外側の層なので、肌に触れる層(インナー・シャツ)を厚くしすぎないのがコツです。冬の重ね着の考え方は冬でも汗っかきはつらいに書きました。

2. 汗をかいたら、肌に残さない

汗をかいたまま服の中で乾くのを待つと、詰まりやすい状態が長く続きます。

  • ハンカチで押さえて吸い取る。こすらずに押さえるのが基本です
  • 汗拭きシートを使うなら、赤くなっていない場所に。ブツブツが出ている所をシートでこすると刺激になります。しみるなら使わないでください
  • 肌着が湿ったら替える。汗っかきは替えの肌着を1枚持っておくと、冬の汗冷えも一緒に防げます。冬の肌着の選び方は汗冷えしないインナーの選び方に

3. あったかインナーは「汗をかく日」に考え直す

吸湿発熱をうたうインナー(いわゆるあったかインナー)が、あせもの原因になると確かめた資料は見つけられませんでした。ここは言い切りません。

ただ、汗をかく行程がある日に、暖かい肌着を重ねたまま暖房の中にいると、「厚着で汗がこもる」というあせもの条件にそのまま当てはまります。通勤で汗をかく人は、肌に触れる1枚を乾きやすい素材にする、暖房の中では上を脱ぐ、といった組み立てのほうが無難です。素材ごとの違いは汗冷えしないインナーの選び方で詳しく整理しています。

4. 寝るときに、暖めすぎない

電気毛布やこたつで寝ると、背中が長い時間ふさがれたまま汗をかきます。MSDマニュアルが「長時間にわたり別の表面と接触している部分」を挙げているのは、まさにこの状態です。寝る前に温めて、寝るときは切るかタイマーにする。電気毛布やこたつの使い方はこたつ・電気毛布で汗をかくに、寝具の選び方は寝汗がひどい人の寝具と寝室にまとめました。

5. 保湿は「入浴後に、汗の多い場所は薄く」

冬は乾燥対策の保湿も必要です。あせもの心配があるからといって、保湿をやめる必要はありません。気をつけるのは塗り方です。

  • 入浴後に塗る。皮脂欠乏症診療の手引きは、入浴後は皮膚から水分が蒸発するため、直後でなくてもよいので保湿剤を塗るべきとしています
  • 汗が多く出る場所(首・胸・背中・ワキ)には、ベタつく軟膏を厚く塗らない。MSDマニュアルが避けるべきとしているのは、この使い方です
  • 体をこすって洗わない。手引きは、ナイロンタオルやブラシでこすると皮膚の乾燥を助長するとして、よく泡立てた石けんで優しく洗うよう勧めています
  • ウールの服は、肌に直接触れさせない。手引きは、羊毛やごわごわした素材の衣類の刺激でもかゆみが出るとしています。ニットの下に肌着を1枚はさむと、汗を吸う層にもなります

冬の汗を肌に残さない道具

道具使う場面気をつけること
タオルハンカチ暖房の電車や室内で汗をかいた直後。押さえて吸い取るこすらない。1枚で足りなければ2枚持つ
汗拭きシートオフィスに着いたあと、背中や首の汗をリセットする赤くなっている所・しみる所には使わない
替えの肌着汗で肌着が湿ったまま過ごしそうな日乾きやすい素材を選ぶ。脱いだ肌着は袋に分けて持ち帰る

どれも汗を出なくする道具ではなく、かいた汗を肌に残さないための道具です。この記事で紹介しているハンカチとシートは記事末尾のアイテムにまとめています(リンク先はアフィリエイト広告を含みます)。

皮膚科に行く目安

あせもの手当ての基本は、涼しく乾いた状態にすることです。ただ、次のようなときは自己判断で済ませず、皮膚科で診てもらってください。

  • かゆみで眠れない、仕事や家事に集中できない
  • かき壊して、じゅくじゅくしている・膿をもっている
  • 涼しくしても数日たって広がっている、何度も繰り返す
  • 発熱や強い痛みがある

MSDマニュアルによると、発疹にはステロイドのクリームやローションが使われることがあります。何を塗るかは状態によって変わるので、市販薬を使うなら薬剤師に、長引くなら皮膚科に相談するのが確実です。

もうひとつ、汗っかきの人に知っておいてほしいことがあります。冬でもあせもを繰り返すほど汗をかくなら、汗の量そのものを相談できるということです。明らかな原因がないのにワキや手のひら、顔・頭などに多量の汗をかく状態は、日本皮膚科学会のガイドラインで多汗症として扱われる診療の対象です。自分がどのくらい困っているかを整理したいときは、12問の多汗症セルフチェックが使えます(診断ではありません)。全身の汗が急に増えた、寝汗がひどい、体重が減ってきた、といった場合は、先に「全身の汗がひどい」は病気のサイン?を読んでください。


この記事は診断・治療の代わりにはなりません。症状の判断と治療の選択は医師と相談して決めてください。